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暮らっしっく日本 五十鈴塾

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櫻井塾長のつぶやき

令和8年秋号「なまめかしき時節を迎えて」

名随筆『徒然草』において、人家に咲く白い夕顔の花を愛で、蚊遣火の煙がくすぶる光景や夏越しの祓いに興趣を感じつつ「水無月」を見送った都人、吉田兼好と思いが重なるように、伊勢の地でも六月は、神宮における年中三度の重要な祭りの一つである「月次祭」が斎行され、また晦日には恒例の「大祓」も行われました。本年の前半を無事に過ごせたことに「お蔭様で」の言葉をもって感謝したいと思います。

「六月祓」と言えば、百人一首にも登場する藤原家隆の詠歌「風そよぐ奈良の小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりけり」(『新勅撰集』夏・一九二番)とともに、洛北の賀茂社境内を流れる「奈良の小川」(御手洗川)を思い浮かべる方もおられましょう。伊勢神宮での大祓は、内宮の五十鈴川辺の御手洗場みたらしに隣接する祓所で神職の参列による儀式が厳粛に行われます。「維新以前皇太神宮祭典祭具図」(増補大神宮叢書25『神宮神事図録』)という資料には、現在とは様子が少し異なり、御手洗場の対面の中州に仮橋が架けられ、そこを祭場として神職が形代を手にし、茅の輪を潜る場面が描かれています。その後、茅の輪は宮域外へ運ばれ、神職家をめぐり、また一般の人々も潜ったのち最終的に中村橋(御側橋)上流の淵へ流棄されたとのことです。

さて、半年間の罪穢れが祓浄され、私たちは新たにリセットされた状態で、残る半年の生活をスタートさせました。兼好法師はその最初となる文月について「七夕まつるこそなまめかしけれ」と記しています。「なまめかし」とは「あでやか」というよりも、七夕行事の麗しいさまを意味していましょう。毎年訪れる七夕の時節ですが、今年の伊勢、なかでも五十鈴川畔はその趣に変化があります。すなわち、第六十三回神宮式年遷宮の関連行事である「お木曳」の「川曳」がスタートする時期に当たります。

新しいご社殿等のご用材を外宮までお木曳車に乗せて奉曳する「陸曳おかびき」は五月・六月に実施されました。一方の五十鈴川を遡行し、内宮へとご用材を搬入する「川曳」は七月二十五日~八月二日に行われます。奉曳団ごとの色とりどりの華やかな幟や法被姿は、川面を渡る涼風とともに、二十年ぶりに「しみじみと優雅な」風情である「なまめかしさ」を楽しませてくれることでしょう。