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暮らっしっく日本 五十鈴塾

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神崎塾長のつぶやき

令和3年春号「潮干狩」

春になると、毎年きまって潮干狩のニュースが流れます。花見に次いでの風物詩として定着している、といってもよいでしょう。その時期は場所によっても異なりますが、だいたい口開けが三月はじめ、五月いっぱいまでが漁期です。

潮干狩の方法には二通りあります。ひとつは、浜で潮が引くのを待って採る方法、もうひとつは、船で沖まで出て潮の引いた浅瀬に降りて採る方法です。

潮干狩は、一説には「磯遊び」(浜遊び・浜降り)にその起源がたどれる、とされます。海辺のまちやむらでは、古来、漁労の解禁前の春の一日を海辺に出て、遊んだり飲食を楽しむ習わしがありました。これが、磯遊びです。磯遊びは、単なる遊興ではありません。寒々しい冬の海から穏やかな春の海へ、それから後の海上の安全と豊漁を祈念しての予祝行事と位置づけられるのです。

それをひとつの原型とすれば、やはり「食べる」ことに意義があります。それも、神人が「共食する」ことに意義があります。

ちなみに、明治期の潮干狩のようすが『東京年中行事』に描かれていますが、それは、潮干狩とはいいながらの遊船の風情で、船上での宴会を楽しむのが目的だったことがうかがえます。そして、みやげの貝は、ちょうど帰りのころをみはからってやってくる商人から買い込み、さも自分たちで採ったように持ち帰った、というのです。

いまでは、潮干狩は、文字どおりに狩る(採る)ことが大事とされ、ある種競技化もしています。残念ながら、その場で潮風をあび、野趣あふれる食事を楽しむ光景は、ほとんどみられなくなってしまいました。

潮干狩の主な対象は、ハマグリ。ハマグリは、北海道から九州にかけての内海の砂泥のなかに棲息します。ですから、伊勢湾や瀬戸内海、有明海などでも潮干狩が盛んです。

日本で、ハマグリを食用とした歴史は古く、縄文時代の貝塚から出土する貝の多くは、ハマグリです。『日本書紀』には「白蛤うむぎ」とあり、それでなますをつくる、と記されています。

婚礼の宴席でハマグリの吸いものがみられるようになったのは、江戸時代の中頃から。でも、古来、ハマグリは、どんなに形が似ていても同じ貝でしか蝶番ちょうつがいがぴったりはまらないことから、夫婦和合のしるし、とされました。室町時代の頃からは、縁起物としてハマグリの貝殻を入れた貝桶が嫁入り道具のひとつに数えられるようにもなっています。

ただし、上巳の節供(三月三日)にハマグリの汁を食するのは、娘の良縁を願ってのこと、などとこじつけない方がよいでしょう。それは、単に旬の滋養を得るがため、と単純にとらえるのがよろしいのです。

伊勢 美し国から

番組概要

「伊勢美し国から」は、日本人古来の生活文化を「美し国」伊勢より発信する15分番組です。
二十四節気に基づいた神宮の祭事や三重に伝わる歴史、文化、人物、観光、民間行事などを紹介。古の時代から今に伝わる衣食住の知恵と最新のお伊勢参り情報を伝えます。
五十鈴塾は、日本文化の再発見を目指して各種講座及び体験講座などを開催してきた実績を活かして、この「伊勢美し国」番組企画を行っています。

令和4年1月 伊勢神宮と五十鈴塾

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