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暮らっしっく日本 五十鈴塾

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神崎塾長のつぶやき

令和4年冬号「漬けもの」

晩秋から初冬にかけて、ダイコンの収穫が盛んです。農家の軒下には、洗ったダイコンが吊り下げられます。現在いまは市販のたくあんですませる家庭が多いものの、かつては多くの家でダイコンを漬けこんでいたものです。

お隣の韓国でも、この時期はいっせいにハクサイキムチを漬けこみます。勤め人にはキムジャンボーナスという手当てもついていましたが、現在いまはやはり市販のキムチに頼る家庭が増加の傾向にあるといいます。

キムチは、漢字では沈葉とも書きますが、中国と共通する表記は菹葉(ユーツァイ)。菹とは塩漬けのことで、塩漬けをすると水気が浮いて材料が底に沈むことから「沈」という字をつかうようになった、ともいいます。

もっとも、日本では、沈葉も菹葉も一般にはつかいません。中国の漢字文化が韓国にも日本にも伝わったことは史実ですが、中国と韓国には共通しても日本では異なる事例もあります。文化伝播のなかでの変容がみられるのです。

野菜を塩で漬けるという基本は、韓国にも中国にも共通します。これは、ひとつには、塩漬けに適したダイコンとハクサイを材料として有していたからでしょう。

ところが、日本と韓国にハクサイが入ってくるのは、歴史的には新しいことなのです。日本では、明治八(一八七五)年の東京博物展に中国の山東さんとうハクサイが出典されて以降のこと。韓国ではそれより古いといいますが、何百年単位ではさかのぼれないでしょう。また、キムチに不可欠なトウガラシにしても、豊臣秀吉が仕掛けた文禄・慶長の役(一五九二~九八年)によって日本にもたらされたのであり、キムチの普及はそれ以降のこと。にもかかわらず、それが古来の伝統食のようにも思われがちです。

漬けものというと、ここでも古語の後退がみられます。京都を中心に「こうのもの」といい、それには、「新香しんこ」と「古香こうこ」があります。新香は浅漬けのことで、野菜の新鮮な味を残すもの。季節はとくに問いません。かつては、客をもてなすために時どきに漬けるハレ(非日常)の漬けものでした。一方、古香はたくあんに代表される保存用の漬けもの。この時期に漬けこみ、ほぼ一年にわたって小出しに食すケ(日常)の副菜にほかなりません。

ところが、近頃は、たくあんを古香と呼び分けられる人が少なくなりました。嘆いてもせんないことですが、日常の食事用語がこうまで混乱するのはいかがなものでしょうか。

言葉の豊かさは、感性の豊かさともいえるでしょう。もちろん漬けものにかぎったことではなく、正しい言葉のつかい分けをしたいものです。