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暮らっしっく日本 五十鈴塾

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神崎塾長のつぶやき

令和4年夏号「夏越の祓い」

旧暦で六月から七月への切りかえが「夏越なごし」。夏越の祓いは、六月晦日(三0日)をもって行なわれます。

夏越の行事として、今日によく伝わるのが、「の輪くぐり」です。そこでは、カヤ(茅)に霊力があるとして、それをもって邪気悪霊を祓おうとします。カヤの霊力とは、ひとつには青く繁る生命力の強さが尊ばれたから。もうひとつには、そのかたちが薄刃に似ていたからでしょう。

かつて、人びとは、本格的な夏を迎えるにあたり、なによりも疫病の流行を恐れました。それを茅の輪をくぐることで防ぐ、とするのです。伊勢に近いところでは、二見興玉神社での茅の輪くぐりがよく知られるところです。

茅の輪は、直径が二、三メートル。一般的には、その輪の中に左足から入ってS字型に回り右足から出ることを三度くりかえします。つまり、輪の中を左回り、右回り、左回りと、8の字に三回くぐるわけです。その時、「水無月みなづきの夏越の祓いする人は、千歳ちとせの命ぶといふなり」(『拾遺集しゅういしゅう』、よみ人しらず)と、三度唱えます。

その後に、「蘇民将来、蘇民将来」と祓いの言葉を続けることもあります。それも、伊勢地方ではよく知られるところの蘇民将来伝説にちなんだものです。零落した武塔神むとうしんを金持ちの弟巨旦こたんは断り、貧しい兄将来は受け入れました。そのお礼に「茅の輪」のお守りを蘇民将来とその家族に授けたところ、そのおかげで、疫病や火事の災いから逃れることがでた、という伝説が、ここによみがえってもいるのです。

茅の輪くぐりのあとは、カヤの二、三本を引きぬいて持ち帰り、それを家の門口に立てます。あるいは、掛けます。それが旧来のかたちでした。

『神道辞典』では、『八雲御抄やくもみしょう』を引いて、「邪神をはらひなごむる祓故に〈なごし〉という」とあり、「名越」という字をあてています。それは、ひとつの解釈として留めおくのがよいでしょうが、「上占、六月、十二月晦日に朝廷に於て大祓が行なわれ、また民間に於ても一般に祓除ばつじょを行なった」という由来には、あらためて注目しなくてはなりません。

つまり、夏越の祓いとは、一年を二季と大別した時の区切りで、年末の大祓と対比されるもの。そういえば、つい近年まで、年に二回の決算習慣が伝えられてもいました。それも、ほとんど意識しないところでの不断の文化伝承なのです。

伊勢 美し国から

番組概要

「伊勢美し国から」は、日本人古来の生活文化を「美し国」伊勢より発信する15分番組です。
二十四節気に基づいた神宮の祭事や三重に伝わる歴史、文化、人物、観光、民間行事などを紹介。古の時代から今に伝わる衣食住の知恵と最新のお伊勢参り情報を伝えます。
五十鈴塾は、日本文化の再発見を目指して各種講座及び体験講座などを開催してきた実績を活かして、この「伊勢美し国」番組企画を行っています。

令和4年1月 伊勢神宮と五十鈴塾

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