神崎塾長のつぶやき
令和6年春号「百薬の長」
新年になりました。早々に悲惨な災害・事故が相次ぎましたが、恙なき復興を祈念したいと思います。
そんなときに不謹慎かもしれませんが、今回は、この辰年を祝って「酒」を話題といたしましょう。
酒をして「百薬の長」といいます。漢書を引用して伝わるのです。
ところが、適量を定めて飲むのがむつかしく、ついつい「酒に呑まれる」ことにもなります。
酒には多くの諺語や俚言がつきまとっていますが、そのほとんどは、深酒での間違いごとを戒めるものなのです。
たとえば、「くどく工面に酒が要り」、ともいいます。酒に酔ったところで、ついつい油断もでます。
それを待って、よからぬ交渉をすることにもなります。江戸で川柳を集めて人気を博した書籍に『誹風柳多留』(明和~天保期)がありますが、そのなかにも「神代にもだます工面は酒が入」の一句があるのです。
この「神代にも」とは、須佐之男命の大蛇退治を指しています。
『古事記』にその記事が載りますが、とくに西日本各地の神楽を通じてなじみも深いことでしょう。
大蛇が酒に酔ったところを、劔で切りつけて退治するのです。その酒は、『古事記』によると、「八鹽折の酒」。ここでの鹽折は、搾りと解釈できるでしょうか。清酒はない時代なので、濁酒を造ります。それに、さらに蒸米と糀を加えて搾り、それを何度もくり返して酒度(アルコール度)の高い酒に仕上げたものです。
しかし、大蛇になってはよろしくありません。同じ『誹風柳多留』でも、「生酔にあしたきりゃれと納めさせ」、ともいいます。生酔は、ほろ酔い。機嫌がよくなったところまでで切りあげさせる。むつかしいことですが、酒飲みの相手も上手にしなくてはならないでしょう。
落語でも、酒飲みを扱った噺が少なくありません。そこでは、酒飲みの愛嬌をとりあげます。「居酒屋」(ずっこけ、とも)・「親子酒」・「盃の殿様」(月の盃、とも)・「花見酒」など。「酒で失敗して、笑われる。それを愛嬌芸で見せなくちゃあいけないんですから相当にむずかしい」、という先代の柳家小さん師の芸談を聞いたことがあります。
笑ってすませてもらえる酒、それもたしかにむつかしいこと。
そうした日本文化としての「酒」を、心して味わっていきましょう。
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伊勢 美し国から
番組概要
「伊勢美し国から」は、日本人古来の生活文化を「美し国」伊勢より発信する15分番組です。
二十四節気に基づいた神宮の祭事や三重に伝わる歴史、文化、人物、観光、民間行事などを紹介。古の時代から今に伝わる衣食住の知恵と最新のお伊勢参り情報を伝えます。
五十鈴塾は、日本文化の再発見を目指して各種講座及び体験講座などを開催してきた実績を活かして、この「伊勢美し国」番組企画を行っています。