神崎塾長のつぶやき
令和5年秋号「十五夜の団子」
秋は、季語でいうと、月であり虫であり踊である。踊(踊り)といえば、盆踊りを連想される方が多かろうが、季節での旧盆は立秋の後となる。
四五人に月落ちかかる踊かな(与謝 蕪村)
さすがに蕪村だ、初秋の風情をよく詠みあらわしている。こんな盆踊りに、どこかでお目にかかりたいものである。
ここにある落ちかかる月がまた満ちる。
月々に月見る月は多けれど 月見る月は 此月の月
作者不詳ながら、名歌である。これは、中秋の名月(十五夜)のことである。旧暦の八月一五日(新暦の九月中旬~下旬)の夜。そのころになると、夏の暑さも去り、空気も澄みわたって、いちだんと美しい月が見られるのである。
十五夜には、縁側や庭先に月見の台をしつらえ、そこにススキを飾り、サトイモの葉にのせてカキ(青柿)、クリ、サトイモ、枝豆、団子などを供えて月を愛でた。ススキは、花瓶に他の花とあわせて生ける場合もあるし、御神酒徳利に挿して供える場合もある。また、サトイモの葉を敷くのは農村部での古風というもので、江戸時代から町場では三方を用いる例も多かった。
もう、その風景が一般の家庭から後退して久しい。
月見団子を子どもたちが盗んでめぐる風習が、かつては全国的にみられた。これを、団子刺しとか団子突きなどといった。団子を盗まれた家でも、「十五夜団子は盗まれるほどいい」といって、歓迎した。それは、供えたものがなくなったのはカミがそれを召しあがったからとし、願いごとが叶ったとしたからである。その場合の子どもたちは、カミの遣いであった。したがって、大人たちに見られないように団子を盗むことがしきたりであった。かつては、子どもたちもムラの行事に参加する機会が多く、それなりに存在意義を示していたのだ。その遊戯化したかたちのひとつが、この団子刺し(団子突き)だったのである。
いや、子どもたちにかぎるまい。「名月や大盃口を望むべく」(活東)か。食中毒もさほど気にせず肥ゆるもよし、としておこうか。
過去のつぶやき
伊勢 美し国から
番組概要
「伊勢美し国から」は、日本人古来の生活文化を「美し国」伊勢より発信する15分番組です。
二十四節気に基づいた神宮の祭事や三重に伝わる歴史、文化、人物、観光、民間行事などを紹介。古の時代から今に伝わる衣食住の知恵と最新のお伊勢参り情報を伝えます。
五十鈴塾は、日本文化の再発見を目指して各種講座及び体験講座などを開催してきた実績を活かして、この「伊勢美し国」番組企画を行っています。